內容簡介

  本書從各種角度針對現代世界、亞洲所面對的諸多問題進行探討。執筆者國籍包含台灣、韓國、日本,其論述觀點與角度必然有所不同。而這些論點的共通性,就是聚焦於情勢瞬變的亞洲,以及各執筆者避免世界流於紛爭、確保和平的想法。京都大學蒙古史學權威,已故的岩村忍教授斷言,防礙文明交流的既非沙漠亦非海洋,而是人類。在現今日漸活躍的經濟交流中,此句名言的份量亦大為增加。歷史的教訓告訴我們,當人類彼此缺乏諒解,就會在經濟交流中造成對立。若能讓讀者透過本書增加對世界的關注,並深化彼此的議論,對執筆者而言將是無比的幸福。

  本書の諸論考では、現代世界、アジアが直面する諸問題が様々な角度から論じられている。論者は台湾、韓国、日本にまたがり、論者の視点、方向性も必ずしも同じでない。しかしこうした諸論考に共通したものがあるとするならば、激動するアジア、さらには世界にあって、紛争を防止し、平和を確保せんとする各執筆者の熱い思いである。文明の交流を阻むものは砂漠でもなければ海洋でもなく、人間であると断じたのは、モンゴル史の権威、故、岩村忍京都大学教授である。この格言は、経済的な相互交流が日増しに盛んになる昨今、ますます重みを増しているように思われる。人間相互間の理解を欠くとき、経済交流には逆に対立を醸成する契機が秘められていることはこれまた歴史の示すところである。この意味で本書の諸論考から読者が、改めて現代世界に対する関心を呼び覚まされ、相互に議論を深められていく上で一助となるならば、執筆者にとって望外の幸せで、ある。

 

作者介紹

編者簡介

徐興慶


  台灣南投出生。日本九州大學文學博士、台灣大學日本語文學系教授、國際日本文化研究中心外國人研究員。著有「近代中国知識人の日本経験─梁啓超、林献堂と戴季陶の日本観の比較─」(2011)、「『伝統』と近代の間:福沢諭吉の儒教主義批判への試論」、(2010)、「東西文化の融合と構築への試論─岡倉天心の「アジアは一つ」を中心として─」(2010)、『近代中日思想交流史の研究』(京都:朋友學術叢書、2004)等。

陳永峰 

  台灣台中出生。日本京都大學法學博士。東海大學跨領域日本區域研究中心執行長。著有「参議院・ねじれ国会・連立政権─1989年以降『連立政治』の常態化について─」(台北:『問題と研究』)、“The Political Economy of Land Reform in Post-War Taiwan: Japanese Colonial Occupation and the Transformation of Taiwanese Landlord Class”(Taipei: Tamkang Journal of International Affairs), “Japanese Colonial Occupation and the Economic Development of Taiwan”(Kyoto: Kyoto Journal of Law and Politics)等。
 

目錄

台湾から世界を考える─編者の一人の「独り言」─ . 陳永峰
はじめに ...................................木村雅昭

第一章 EUと東アジア共同体 .................木村雅昭
第二章 「国制」としてのヨーロッパ ─主権国家の後に来るもの─ .........島田幸典
第三章 「東アジア共同体」の伝統的な地域統合概念の発見 ─東洋の歴史経験と文化価値の分析─ .. 張啓雄
第四章 日本知識人の外交論と「東アジア共同体」 ......... .................................... 滝田豪
第五章 東アジア共同体の構築 ─背景としての日中関係─ ...........東郷和彦
第六章 東シナ海争議下の日中関係 ............. 何思慎
第七章 日本から見た中国台頭の社会的経済的意義............ ...................................三宅康之
第八章 朝鮮半島から見たグローバル・パワー としての中国 .................................... 宋錫源
第九章 「海洋中華世界台湾」と「海洋国家日本」の交錯 ─「世界単位」としての東アジア─ ...... 陳永峰

あとがき ................................... 徐興慶

人名索引
事項索引
 

編者序

  台湾から世界を考える ─編者の一人の「独り言」─


  本書の出発点は、台湾・東海大学日本地域研究センター(中国語標記:東海大學跨領域日本區域研究中心)の開設記念行事の一環として、2011年5月17日に台湾台中市で行われた国際シンポジウム「大転換の東アジア:ECFA体制下における日台社会・政治・経済構造の変容と展望」である。ここで行われた議論は、ある意味で、シンポジウム参加者の間で本書の上梓までずっと続いていた。文字テクストに偏りがちなシンポジウムの性格を補うために、期間中の会場内外での議論も、各章の担当者が再構成・再編集して、本書の章間に収めた。我々の議論がどのような場で、どのような意識の下で生まれたのかを知っていただくことは、本書を理解する上で重要だと思う。したがって本書は、シンポジウム周辺の知的営為の記録という性格も併せ持つものである。

  さて、本書を手にする日本の読者の中には、台湾の知識人が持つ問題意識や時代認識に、今までに接した経験がない方がおられるであろう。日本の新聞にもしばしば台湾の政治記事が見られるようになったが、多くが「政局」のレベルであり、社会的精神的な深層に切り込むものは少ないように思われる。若干の認識を共有するために、国際シンポジウムや本書の背景、さら言えば台湾の大学に「日本地域研究センター」が存在する背景について、私なりの「独り言」を記してみたい。

  近代社会学の父マックス・ウェーバーが、十八世紀のヨーロッパに資本主義を成立させ発展させた原動力は、技術の進歩でも商業の発達でも資本の蓄積でもモダン的制度でもなく、資本主義のエートスであると考え、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を著した。ウェーバーの言う資本主義のエートスは、プロテスタントの宗教倫理たる世俗内禁欲に由来する。禁欲的プロテスタンティズムがあるがゆえに、欧米ではプレモダン的商業からきっぱりと決別してモダン資本主義をスタートさせることができたというのである。いわば、資本主義のエートスとは、資本主義に魂を吹き込む神の息のようなものなのである。もちろん資本主義だけではない。およそモダン的なるものすべてにおいて、それを我が物とするには、モダン的なエートスが不可欠なのである。

  しかし、他力によって近代化への道のりを突き進んだ台湾には、もとよりそうしたモダンの前提条件は存在しなかった。同時に、自分たちの「国家」、「国民」がどのような姿をしているのか、自分たちの社会がいかなる規範に支えられているのか、自覚する余裕もなかった。己の姿に無自覚のまま、相手の姿を知ることもなく、近代台湾は日本人や中国人やアメリカ人等を通じて近代化を取り入れ、百年以来、自己説明ができないままで擬似モダン社会を生きてきた。

  昨年暮れ、ひとつ予想外のニュースが飛び込んできた。北朝鮮の金正日総書記死去と三男金正恩氏の最高指導者就任がそれである。独裁者の終身制と世襲による後継決定、東アジアには未だにプレモダン的な国家が存在している。一方、台湾では1月中旬の総統・立法委員同日選は馬英九・国民党の勝利に終わった。民進党の蔡英文候補は敗れたが、52%対46%の現実からみれば馬政権のこれ以上の対中傾斜は難しい。暫く台湾海峡が安泰だろうとはいえ、投票日二週間前の2011年12月30日、馬政権が徴兵制から募兵制への兵役制度の移行を宣言した1ことには考えさせられる。

  義務兵役は、戦後の半世紀以上、長期間に亘り「国民」の身体と精神を制限し、議論する余地もなく受け入れられていた。皮肉な運命のように、半世紀を超えた現在、廃止されることもあまり議論されず、すんなりと受け入れられるようである。近いうちに(2014年頃)、徴兵制は台湾社会の歴史的記念物になり、安易な「平和」感覚が蔓延していくかもしれない。中台和解と徴兵制廃止を同時に実現することは、台湾のポストモダン的な性格を如実に示すことになるであろう。

  あらゆる分野でグローバリズムが横行している現在、国際的な「人間関係」を考えるときに、国や地域によって異なる歴史や「伝統」に由来する困難を避けて通ることはできない。グローバル化の推進は、国家間の「人間関係」のあり方の違いを否応なく際立たせる。その違いをどれだけ深く認識できるかが、政治外交の世界でも人間交流の現場でも商業貿易の交渉でも、関係性構築の鍵を握る。違いの認識、それは己を知り相手を知ることに他ならない。その重要性は今日ますます高まっているのだが、台湾人は相手を知るどころか、己の姿さえきちんととらえていないのではないか。

  台湾人は、自分たちがどのような国民であるか、あるいはどのようなタイプの国民であるかについては、あまり関心がない。そもそも自分を説明しようとすることもあまりない。この点は、日本が明治以来ずっと自分を説明しようとしてきたこととは大きく異なる。普通、説明するのはアイデンティティを確認するためである。自分を説明するのは、自己アイデンティティを確立するためである。しかし、我々台湾人は、説明が難しい世界に住んでおり、自分を説明することはあまりない。あるいは次のようにも言える。我々は「伝統が創造されていない」2国に住んでいるので、自分のことを説明する術を持たないのである。

  つまり、自己を冷徹に定義する意識のない国民に、グローバル化時代を生き抜く力はない。この理解が正しいのであれば、政治的にも経済的にも、国際社会において孤立し、国内的には行き詰まりに苦悩する今日の台湾社会の姿は必然だといえよう。こうした特徴は、中国が力強く急速な「世界史的復権」3を遂げる潮流の中で、さらに顕著となっている。したがって台湾は、近代国家の「一民族・一文化・一国家」という時代遅れの「民族=国家」の虚構から抜け出さない限り、いつまでも苦しみ続けるだろう。つまり、E・ゲルナーによれば「国民国家創造の苦悩、それはナショナリズムの苦悩にほかならない」4。ただし、これは血を流さない民主化あるいは安上がりの民主化が、長期にわたって払い続けなくてはならない代価でもあり、1996年以降、五回の総統選及び二度の政権交代を経ても、まだ出口が見つけられないままである。

  さて、「独り言」が長くなってしまったが、本題にもどろう。

  国際シンポジウム「大転換の東アジア:ECFA体制下における日台社会・政治・経済構造の変容と展望」は、2010年6月に中国と台湾の間でECFA(経済協力枠組み協定)が締結され、2011年1月より発効した状況下で、中台の経済的な接近がどのような意味を持つのか、それが東アジアの地域協力のなかで今後いかなる役割を果たしていくか、つまり、東アジアにおける地域主義と地域協力のありかたを考え、日本や台湾にどのような影響を与えていくかを主題としており、木村雅昭京都大学名誉教授による基調講演(「EUと東アジア共同体」、本書第一章に収録)、彭榮次外交部亜東関係協会会長(2012年2月退任)、東郷和彦京都産業大学世界問題研究所所長、国分良成慶應義塾大学法学部長(2012年4月以降、防衛大学校学長)による「ランチョン・セミナー ECFA体制下におけるニュー・アジア」、午後の三つの分科会という構成で、できるかぎり多様な切り口から、現代東アジアの中心的な問題を論じようとしたものである。

  本書は、以上のような背景を前提としつつ、個々の研究者(発表者)が特定の地域、あるいはテーマを選択し、自らの議論を展開する形で構成されている。そこに存在するのは、参加する研究者の次のような共通認識であったように思う。つまり、激動するアジア、さらには大きな転換点にさしかかりつつある世界にあって、紛争を防止し、地域の平和を確保しようとする各研究者の熱い思いである。

  このような問題に対して、本書は以下のような諸論文をもって答えている。第一章及び第二章では歴史・理論、第三章及び第四章では文化・思想、第五章及び第六章では国際関係、第七章、第八章及び第九章では比較政治・地域研究を中心に大別される。著者達は欧州地域協力と東アジア地域協力という大きな比較的視座にたちながら、これからの東アジアにおける地域協力の方向性・可能性を探るというものである。

  本書の目次は次の通りである。

  第一章、木村雅昭、「EUと東アジア共同体」
  第二章、島田幸典、「『国制』としてのヨーロッパ─主権国家の後に来るもの─」
  第三章、張啓雄、「『東アジア共同体』の伝統的な地域統合概念の発見─東洋の歴史経験と文化価値の分析─」
  第四章、滝田豪、「日本知識人の外交論と『東アジア共同体』」
  第五章、東郷和彦、「東アジア共同体の構築─背景としての日中関係─」、
  第六章、何思慎、「東シナ海争議下の日中関係」
  第七章、三宅康之、「日本から見た中国台頭の社会的経済的意義」
  第八章、宋錫源、「朝鮮半島からみたグローバル・パワーとしての中国」
  第九章、陳永峰、「『海洋中華世界台湾』と『海洋国家日本』の交錯─『世界単位』としての東アジア」

  結局、一言で言うなら、本書は、日本、韓国、台湾の知的世界における第一線の研究者を中心に、欧州地域協力と東アジア地域協力の歴史・思想・現状と課題を明確化し、今後の地域協力と協調へ向けた具体的な政策提言を試みた野心的な共同研究の成果である。本書を通じて、首肯するにせよ批判するにせよ、読者が少しなりとも知的刺激を受けてくださったとしたなら、ここに結集した各国のメンバーの思いは十分に果たされたことになる。

  なお、本シンポジウムは、東海大学の他、財団法人日本交流協会、行政院大陸委員会、教育部、財団法人台湾民主基金会、台湾現代日本研究学会の援助を得て開催された。本書の刊行は、台湾大学出版センターの関係者及び、本書のもう一人の編者でもある台湾大学人文社会高等研究院「日本・韓国研究統合プラットフォーム」徐興慶執行長から多大な御協力を受けた。ここに感謝する。

2012年3月23日、ガジュマル並木の傍の研究室にて
陳永峰 東海大学日本地域研究センター執行長
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