作者序
台湾の読者の皆様へ
中学生の頃から、密室物の推理小説が大好きでした。
鍵のかかった部屋や、周囲に足跡のない家や、衆人環視の空間など、犯人が出入りできたはずのない場所で起きた、およそ不可能としか思えない事件。それが鮮やかに解き明かされるさまに目を見張り、密室物と紹介されていれば無条件で飛びつきました。
密室物の巨匠ジョン・ディクスン・カーに夢中になりましたが、同じぐらい夢中になったのが、さまざまな作家の密室物の秀作を集めたアンソロジーや、一人の作家の密室物ばかりを集めた短編集です。
長編は物語を膨らませるために密室以外にいろいろな要素を含みますが、短編は密室だけに焦点が当てられ、余分な要素がありません。だから、密室物ばかりを集めた短編集は、好物ばかりを取り揃えたディナーのような楽しみを与えてくれました。
けれども残念ながら、そうした短編集は多くありません。そうした短編集をもっと読みたい――その願いはやがて、自分でも書きたいという願いへ変わりました。長年のそうした願いをようやく叶えることができたのが、本作『密室蒐集家』です。
日本のどこかで密室殺人が起きると、密室蒐集家と名乗る謎の男が現れ、たちどころに事件を解決して消え去ります。一九三〇年代から二〇〇〇年代まで、事件の起きる時代はさまざまですが、不思議なことに男は少しも年を取りません。
時代がさまざまなように、事件もさまざまです。女学校の鍵のかかった音楽室での殺人、刑事たちに監視された現場での殺人、鍵のかかった部屋からの転落死、密室のトリックはわかっているのに密室を作った理由がわからない事件、雪上に犯人が出入りした足跡のない家での殺人……。いずれの事件も密室蒐集家が鮮やかに解き明かし、意外な真相を披露します。
少年の日、密室物に目を輝かせていた自分自身を満足させられるような作品にしたい。そう思いながら一作一作書き上げる作業は苦労の連続でした。しかしおかげで、かつての自分にも「よかったら読んでみて」と言える作品になったのではないかと思います。
長年の願いが結実した本作は、私にとってひときわ愛着のある作品です。その本作が、多くの方が推理小説を楽しみ、目の肥えた読者が大勢おられる台湾で紹介されることは、私にとって大きな喜びです。
一人でも多くの方が本作を楽しんでくださることを願ってやみません。
敬致台灣的諸位讀者
自從初中生的時候,就非常喜好密室作品的推理小說。
發生在上了鎖的房間、周圍沒有足跡的房子、眾人環視的空間等,犯人沒道理進出得了的場所,只能認為是根本不可能的事件。對那被精湛解明的情況,吃驚地瞪大眼睛,如果有密室作品被介紹,就會被無條件吸引過去。
對密室作品的巨匠約翰.狄克森.卡爾入迷,同樣入迷的還有匯集各種類型作家的密室傑作選,以及專收單一作家的密室短篇集。
長篇作品為了擴大故事的規模,包含了各式各樣密室以外的要素,至於短篇作品則僅聚焦於密室,沒有多餘的要素。因此,專收密室作品的短篇集,就像只將喜好的食物準備齊全的晚餐,帶來那樣的快樂。
不過遺憾得很,那樣的短篇集並不多。更想要讀那樣的短篇集――那個願望終究轉變成連自己都想寫的願望。好不容易讓多年那樣的願望得以實現的,就是本著作《密室收藏家》。
一旦在日本的什麼地方發生密室殺人事件,就會出現自稱密室收藏家的謎樣男子,當即解決事件而消失。從一九三〇年代到二〇〇〇年代,發生事件的時代儘管各自不同,不可思議的是男子卻一點也不會老。
好比時代各自不同,事件也是形形色色。在女子學校上了鎖的音樂教室殺人事件,現場被刑警們監視的殺人事件,從上了鎖的房間墜落死亡,明明知道密室的詭計、卻不知道製作密室理由的事件,雪上沒有犯人出入足跡的屋內殺人事件……。每個事件都由密室收藏家精湛解明,宣布意外的真相。
想要做到少年時光,對密室作品目光炯炯的自己能滿足的作品。一邊那樣想,一邊逐篇寫完的工作是辛苦的連續。然而托大家的福,想必已經成為也能對過去的自己說「可以的話,讀看看」的作品。
多年的願望結成果實的本著作,對我而言是格外留戀的作品。那樣的本著作,能在許多人享受推理小說、有鑑賞能力的讀者人數眾多的台灣被介紹,對我而言是巨大的喜悅。
持續企盼更多人享受本作品。
大山誠一郎